不完全履行

不完全履行(ふかんぜんりこう)とは、債務者(義務を負う人)が契約に基づいて一応の履行(義務の実行)を行ったものの、その内容が不十分であったり欠陥(不備)があったりすることを指します(債務不履行の一種)。

例えば、「新車を納車してもらったが、すでに大きな傷がついていた」「納品された機械の部品が一部足りず動かない」といった状態がこれにあたります。

1. 不完全履行の2つのパターン

不完全履行は、欠陥や不備を後から直せるかどうかによって2つに分類されます。

  1. 追完(補修・やり直し)が可能な場合

    • 例:部品の不足、補修可能な傷、書類の記載漏れなど。

    • 性質:後から完全な状態にできるため、本質的には「履行遅滞」に準じて扱われます。

  2. 追完(補修・やり直し)が不能な場合

    • 例:納品された限定品の美術品に修復不可能な傷がついている、腐りやすい食品が傷んで届いたなど。

    • 性質:後から直すことができないため、本質的には「履行不能」に準じて扱われます。

2. 不完全履行によって生じる「拡大損害」

不完全履行の大きな特徴として、欠陥のある商品そのものの損害(直接損害)にとどまらず、他の財産や生命・身体にまで損害が広がるケース(拡大損害)があります。

  • 具体例: 食中毒を起こす菌が付着した牛肉を購入して食べ、家族が食中毒で入院した場合。

    • 直接の損害: 代金分の牛肉の価値(欠陥商品)

    • 拡大損害: 医療費、休業損害、慰謝料など

3. 相手方(受領者・買主)が取れる法的手段

不完全履行を受けた場合、相手方は債務者に対して以下の法的請求を行うことができます。

法的手段 内容
追完請求(履行の追完) 完全なものをもう一度納品させる、修繕させる、不足分を納品させる。
代金減額請求 (契約適合がない場合)追完に応じない場合などに、不備の程度に応じて代金の減額を求める。
損害賠償請求 不完全な履行によって生じた損害(拡大損害を含む)の賠償を請求する。
契約解除 相当の期間を定めて追完を促し(催告)、それに応じない場合(または追完不能な場合)に契約を白紙に戻す。

※2020年4月の改正民法により、売買契約等における不完全履行は「契約不適合責任」の枠組み(追完請求・代金減額請求・契約解除・損害賠償請求)の中に統合され、よりわかりやすく整理されました。

4. 他の「債務不履行」との比較

区分 履行の状態 主な対応(帰責性がある場合)
履行遅滞 期日を過ぎても全く履行していない 催告して履行を促す、遅延損害金の請求
履行不能 後から履行することが物理的・社会通念上に不可能 無催告で直ちに契約解除、損害賠償請求
不完全履行 一応履行されたが内容に不備・不完全さがある 追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償

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